多くの企業が注目する女性の労働力はビジネス成長のカギとなる

高齢化で労働力人口が減り続ける日本において、女性の労働力活用は潜在成長率を高めるカギとされる。完全雇用に近づく中で、人手不足に直面する企業は女性の採用を強化しており、最近も物流大手2社が女性配送員を2~3年でそれぞれ1万人増強する方針を打ち出している。

15~64歳の人口に占める労働力人口の比率(労働力率)を見ると、男性は84.6%と経済協力開発機構(OECD)加盟国で4番目に高い一方、女性は24番目の65.0%にとどまり、確かに女性の就労にはまだ伸び代がある(ただOECD平均の62.6%よりは高い)。女性の年齢別の労働力率には、出産・育児期の20歳代後半から30歳代に比率が下がる「M字カーブ」が観察され、この年齢層を中心に労働力率を高めることは可能だろう。

米欧でもかつては「M字カーブ」が観測されていたが、1980年代にはほとんど解消されている。出産・育児でキャリアが中断されない働き方は、それまでに蓄積された人的資本の劣化が回避されるため、単に労働供給が増えるだけでなく、生産性上昇を通じ、潜在成長率を高めることが可能となる。

昨年の労働力人口は6年ぶりに増加

こうした点から見ると、昨年来の女性の就労状況は心強い。2013年の女性の労働力率は48.9%(2012年48.2%)へと上昇したが、中でも労働力の7割強を占める15~64歳の労働力率は65.0%(2012年63.4%)と過去最高を記録し、前年からの上昇幅も1969年以来で最大となった。

0.3%の潜在成長率を大幅に上回る成長(2013年暦年は1.5%、年度は2.3%)が続き、求人が増加したことにより、2011年3月の東日本大震災以降、低迷していた女性の労働力率が一気に高まったのである。この結果、労働力率に15歳以上人口を乗じた労働力人口も、女性は前年比1.4%と増加した。

男性が0.4%減少した分を女性が補い、労働力人口は一国全体でも0.3%と2007年以来のプラスとなっている。今年に入ってからも女性の労働力人口は増え続け、1~6月平均では前年比0.7%となった。この間、男性は0.3%減少したが、一国全体では0.2%とプラスを維持している。

それでは、今後も女性の労働力率が大きく上昇することで、日本の労働力人口の減少を避けることは果たして可能だろうか。楽観的な見方も広がっているが、以下、分析した。

女性の労働力率は低下トレンドに

まず、日本の労働力人口は1999年から減少傾向にあり、2000年以降、累積で2.3%減少している。ただ、男性が6.0%減少したのに対し、女性は1.9%増加している。これは、1)女性の労働力率の下げ幅が0.4ポイントと男性(同5.9ポイント)より小幅な一方で、2)15歳以上の女性人口が1.9%増加したためである。

女性の労働力率が低下している、というと意外に思われる方も多いかもしれないが、実は女性の労働力率は1991~92年にピークをつけ、その後は低下している。欧米のバブルを背景に輸出ブームに沸いた2000年代半ばに下げ止まりはしたものの、その後も昨年までは低迷したままだった。

仕事を持つ女性が増えているという印象が誤っているわけではない。確かに、女性の労働力率を年齢別に見ると、若年(15~24歳)と高齢者(70歳以上)を除けば、明確な上昇トレンドが観察される。

その背景には、1)1970年代後半から90年代の進学率の上昇で、教育を受けた女性が増えたこと、2)1986年の男女雇用機会均等法や91年の育児休業法の施行で女性の就業を促す制度改正が進んだこと、3)婚姻率低下で労働力率の高い未婚女性が増加したことなどがある。特に男女雇用機会均等法の影響は大きく、同法施行後に学業を終えた世代の女性の労働力率はそれ以前に比べて明らかに高い。

近年、大きな制度改正は行われていないが、労働力率の高い均等法以降の世代が年を重ねることで、各年齢の女性の労働力率は今後も上昇するだろう。これまでのペースで上昇し続ければ、15~64歳の女性の労働力率は、2017年には現在の欧州連合(EU)並み、2020年には米国並みとなり、諸外国と遜色ない水準に達する。

それでは、なぜ女性全体では労働力率が低下しているのか。原因は年齢構成の変化にある。

労働力率は、各年齢の労働力率と各年齢の人口シェア(15歳以上人口に占める割合)に分解できる。2000年以降について見ると、15~64歳の労働力率は5.4ポイントと大幅に上昇(2000年59.6%から2013年65.0%へ)し、65歳以上はマイナス0.6ポイントと小幅な低下にとどまり(14.4%から13.8%へ)、年齢構成に変化がなければ労働力率は全体でも上昇する。

しかし現実には、労働力率の高い15~64歳の人口シェアが低下し(77.2%から68.5%へ)、労働力率の低い65歳以上の人口シェアが上昇したため(22.8%から31.5%へ)、女性の労働力率が全体として低下したのである。

ちなみに、65歳以上の労働力率が低下したのも同じ理由である。健康寿命の長寿化もあって65~70歳の労働力率は上昇しているが、労働力率の低い70歳以上の人口シェアが高まり、これが全体を押し下げている。

潜在成長率の大幅な向上は期待薄

残念ながら、15歳以上の人口動態は15年以上前の出生数に規定され、移民の大量受け入れなどの方法を取らない限り変えることはできない。過去20年間、女性の就労が進んでも労働力率の低下を止めることができなかったという厳しい現実に向き合うと、高齢化が進む将来の労働力人口についても楽観はできない。

この先10年について考えると、労働力率を規定する要因のうち、女性の15歳以上人口は累積で2.0%減少する。そして、もう一つの要因である労働力率については、15~64歳の労働力率がこれまで通りの速いペースで上がり続けたとしても、15~64歳の人口シェアが今より5.1ポイント低下(65歳以上の人口シェアが5.1ポイント上昇)する影響を相殺しきれず、2013年の48.9%から2023年には47.9%へと低下する。この結果、女性の労働力人口は10年間で3.9%減少することになる。

一方、男性については、各年齢の労働力率も上昇していないため、労働力人口は女性以上に減少する。筆者の試算では、男性の労働力人口は今後10年間で累積7.3%減少し、一国全体の労働力人口は5.8%減少する(年率では0.6%減少)。

ちなみに、減少するのは労働力人口だけではない。女性や高齢者の労働時間は15~64歳の男性よりもかなり短いため、女性や高齢者の比率が高まるにつれ、平均労働時間も短くなり、これも労働投入の減少につながる。

筆者の試算では、2010年代に平均労働時間は年率0.2%減少し、労働人口と労働時間を合わせた労働投入は年率0.8%のペースで減少する。女性の労働力の活用だけでは男性の減少を穴埋めできない。

繰り返すが、女性の労働力率を高める努力は重要である。仮に15~64歳の女性の労働力率が2013年の水準にとどまれば、10年後の女性の労働力人口は8.1%減少し、一国全体の労働力人口も7.6%(年率0.8%)減少する。潜在成長率を少しでも高めるために、女性の労働参画を阻害する税制や社会保障制度を改革しなければならない。

ただ、15歳以上人口そのものが減少している上、高齢化で労働力率の低い65歳以上人口が増加、労働力率の高い15~64歳人口が大きく減少するため、女性の労働力人口の減少トレンドは変わらない。昨年来の好況で女性の労働力人口が急増したため、このまま増加トレンドに転じると期待する向きもあるが、好況は永続しないため、いずれ訪れる不況局面で女性の労働力人口は減少し、景気循環を均(なら)して見れば減少トレンドだった、ということになるだろう。

従来から述べている通り、人口動態を考えれば、労働力人口の減少は不可避であり、それゆえ、潜在成長率を大幅に引き上げられると期待するのは現実的ではないし、そうした高い成長の継続を前提に社会保障制度や財政制度を運営するのも妥当ではない。

提供:http://jp.reuters.com/

無料転職求人サービス

  • DODA(デューダ)の無料転職支援サービス
  • ハタラクティブの無料転職支援サービス
  • ヒューマンタッチの無料転職支援サービス
  • リクルートエージェントの無料転職支援サービス
ページトップ