ニート&フリーター専用研修実施!10日間で正社員を目指す!

4月中旬、東京・西新宿にあるオフィスビルの一室。リクルートスーツ姿の20代の若者が、企業の採用担当者と机を挟んで向かい合う。驚くような大きな声でのあいさつと自己紹介が終わると、熱気を帯びた面接が始まる。

新卒の合同就職セミナーなどでは、企業の担当者の話をおとなしく聞く学生の姿が目立つ。この場は違った。積極的に質問しているのは求職者である若者の方。所定の12分が経過すると大きな声で「ありがとうございました!!」と礼を言い、隣の企業の机に移動する。

エンカツの参加者と企業の合同面接会。参加者は驚くほど大きな声であいさつする

これは、人材会社エン・ジャパンが昨年7月に始めた20代限定の就職支援サービス「エンカツ」の光景だ。このサービスでは、フリーターやニート、内定を獲得できずに大学を卒業したり、就職後すぐに会社を辞めたりしてしまった人物など、対象を20代に限定している。参加者に共通するのは営業職への興味と「正社員になりたい」という動機だ。

記者が取材した日の参加者は26人。4月ということもあり、就職先が決まらないまま大学を卒業したいわゆる「第2新卒」も目立つ。誰もがはつらつとした若者に見えるが、「研修の初日は挨拶するのもやっとで声も小さく、相手と目も合わせられないような人が多かった」とエンカツの責任者であるエン・ジャパン育成型紹介部の林善幸部長は話す。

参加者を変えたのが2週間、合計10日間の研修だ。連日、朝から夕方まで、ビジネスマナーに始まり、「主体的に変化する」「目標必達」「仕事を楽しむ」など、社会人や営業職に必要な考え方をあの手この手で伝える。

例えば、数人のグループに分かれてレゴブロックを組み立てるプログラム。要求された形状に組み立て、それを製品に見立てて一定の価格で売り、売り上げを競い合う。そしてその結果について、「なぜ他のグループよりも売り上げが低いのか」「なぜ残り時間でもう1つ作ろうとしなかったのか」など、参加者一人ひとりに担当者が付いて「スパルタ式」の指導を徹底する。「有料の就職セミナーでは参加者が嫌がる研修はやりにくく、面接対策など小手先のノウハウに終始しがちになる。無料だから厳しく鍛えられる」と林部長は話す。

参加者はどう感じたのか。家電量販店で派遣社員として携帯電話の販売を担当していた26歳の男性は「これまでの職場ではリーダー的存在で自信もあったが、正社員になれる可能性がほとんどなかった。研修を通じて、改めてチャレンジしようという気持ちが湧いた」。この4月に大学を卒業したばかりの23歳の女性は「就職活動では志望業界を絞りすぎたため結果が出なかった。研修で自分に何ができるかを改めて考え、視野が広がった」と話す。受け止め方はそれぞれだが、同じような境遇と目的意識を持つ同世代の参加者と刺激し合うことで、考え方が大きく変わるケースが多いようだ。

企業を選び”ブラック”排除

冒頭に見た企業20社との面接が研修を締めくくる。通常の新卒・中途採用であれば最初の関門は書類選考となる。過去、書類選考で落とされ続けた経験がトラウマになっている参加者も少なくないが、エンカツではいきなり採用担当者と顔を合わせる。企業には参加者の履歴書が事前に渡されており、参加者も研修の一環として面接をする企業を研究し、質問を考えたうえで本番に臨む。

面接が終わると、参加者と企業がそれぞれ相手を「A」「B」「C」の3段階で評価し、双方とも「A」か「B」で相思相愛だった場合のみ、採用に向けた面接に進む。最終的に入社に至った場合、企業は90万円を紹介料として支払う。人材紹介サービスでは、企業に人材を紹介して入社に至る「入社決定率」は一般的に10~15%と言われる。エンカツの場合、決定率はその4~5倍と高い。

参加する企業は、ソフトウェア関連のベンチャー企業からニッチ分野で高いシェアを持つ中堅製造業など幅広い。知名度が低く人集めに苦労している中小企業だけでなく、20%近い営業利益率を誇りビジネスパーソンなら誰もが知る高収益のサービス企業など、大手企業も少なくない。ある大手の保険会社も「若者は営業職を敬遠する傾向にあり、採用環境はかなり厳しい。営業に前向きな若い人材を採用したい」(中途採用担当者)と初めてエンカツに参加した。

企業にとっては、意欲ある若手に絞って面接できることで選考を効率化できるメリットがある。車検用機器を販売する安全自動車(東京都港区)はすでに2人をエンカツで採用済み。同社の採用担当者は「一般の募集では自己アピールできずに面接が終わってしまう傾向にあるが、ここでは準備をして面接に臨むこともあって自信を持っている。一人でも多く採用したい」と話す。

外食チェーンや投資用不動産販売など、就職先として敬遠されがちないわゆる“ブラック”批判のある業界や企業は参加を断っているのも特徴だ。そうすることで、参加者に安心感を与えようとしている。参加者も企業も「満員御礼」が続いていることもあり、エン・ジャパンはこれまで2週間単位の1グループで運営してきたが、近くもう1グループ増やし、さらに東京以外でのサービス開始や同じモデルの新卒採用へ展開も計画している。

新卒も中途も、大量募集・大量採用のモデルだけでは企業と求職者の需要を満たせなくなりつつある。エンカツのような、一見、非効率に見えるサービスの需要の高まりは、企業の採用環境がますます厳しくなっている現実を物語る。

提供:日経ビジネス オンライン

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