「資格は本当に使えますか?」の質問に大手企業が回答

結局、人事部は資格ホルダーをどう見ているのか

企業は、資格や能力開発についてどう考えているのでしょう。会社、そして人事部の本音を探るため、最後に次の質問をしました。

資格について、あるいは社員の能力開発について、日頃考えている点がありましたら、自由に書いて下さい。なお、匿名でもかまいません。最後に「匿名希望」と書いて下さい。

「資格は本当に使えますか?」と大手企業に聞いてみた結果

大和ハウス工業

「一級建築士、一球建築施工管理技士、宅地建物取引主任者など、事業を行う上で必須となる公的資格については、一層の取得促進が必要と考えます。また、今後の海外への事業展開の拡大のためには、語学力の向上は喫緊の課題であると考えています」

ミツバ

「グローバルビジネスマンやグローバルエンジニアを認定する仕組み(試験・資格など)があると、日本の国際競争力向上の一助になるのではないか」

三井住友海上火災保険

「目指す社員像は『自ら学び自ら考え、チャレンジし、成長し続ける社員」。知識やスキルだけはなく、仕事への取り組み姿勢や意欲などを兼ね備えていることが望ましい」

富士ゼロックス

「グローバル市場での成長シナリオの実現には、全社でのグローバル対応力強化が不可欠であると考え、そのリテラシーの一つである英語力向上を推進しています。グローバルで活躍できる人材の育成を目指し、Q4に記述の通り、昇格試験において2012年審査からTOEIC600点を審査基準に設定しました。また、欧米地域・豪州への海外業務研修は、TOEIC700点相当、留学研修はTOEIC700点以上(もしくはそれに相当する他試験のスコア)を望ましい語学力の目安に設定しています」

IT関連企業

「自分の能力開発を行うことは素晴らしい。『資格の先で何をしたいのか』があるとさらに素晴らしい」

外資系企業

「まだ導入はしていませんが、MBAプログラム派遣や短期語学留学など、主に英語力改善を目的とした取り組みを検討しています」

流通大手

「会社として推奨している資格のほかにも、通信教育や教材購入などの費用を会社が一部負担することで社員の能力開発を支援しています」

機械大手

「業務上必要とする資格については会社も支援しているが、社員の能力開発はOJTが基本であると考えている」

ホテル大手

「社員の自己啓発支援として資格取得を会社が支援することは有効である」

ビール大手

「タレントマネジメントの考え方。個性やこれまでの経験はもちろんだが、保有能力や資格、教育歴を生かし、戦略的な異動配置や人事戦略を展開することも必要と感じている。『自分の人生は自分で切り拓く』という意識の向上が必要。新たな学びや経験を得て成長しなくても仕事ができる、ということでなく、学習力に満ちた風土をつくっていきたい」

不動産大手

「学生であれ、ビジネスマンであれ、目的を持った上での資格取得は、業務における基礎知識の習得において非常に有益だと思います。ただし、資格取得自体が目的化している場合は、評価は限定的にならざるを得ません」

不動産大手

「不動産業なので宅地建物取引主任者の資格取得には力を入れているが、それにとどまっている現状である。社員に自己啓発の姿勢を身につけてもらいたいので、資格が取得できるかというよりは、進んで学ぶ環境作りに力を入れていきたい」

会社の社員への、「あって欲しい姿」が資格という切り口からも読み取れます。ただ、会社によってその姿はマチマチだといえるでしょう。

26の資格を持つ人をインタビュー

さて、ここで本連載の最後を飾るにふさわしい、数多くの資格を取った方にご登場いただきましょう。

新栄不動産ビジネス執行役員の藤野雅一さんは、1950年生まれ。

国際基督教大学教養学部社会科学科を卒業。ゼネコン勤務から不動産会社に転職した経験をもち、同社に入社したのは2010年。エネルギー管理士をはじめ1級電気工事施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級施工管理技士、第3種電気主任技術者など、文化系出身なのに理工系資格を含め26もの資格を有しています。

「61歳の時には建築物環境衛生管理技術者(いわゆるビル管)を、62歳では一級間工事施工管理技士を取得しました。年齢と資格取得の勉強はあまり関係ありません」と藤野氏。両資格は国家資格であり、12年に取得しました。

「入学試験と資格試験とは違います。資格試験は、基準点をクリアーすればいいのです。入試のように満点を目指したら、難しくなります。そうではなく、基準点から“何問は捨てられる”と考えるべきなのです。資格試験にも無茶苦茶難しい問題は出題されます。しかし、簡単な問題と配点は変わりません。だとすれば、難しい問題は捨ててしまい、わかる問題を確実に答えていくべきなのです。コツがあるのです。入試のような相対評価ではなく、絶対評価なのですから」

では具体的な勉強方法は、そして準備期間はどのくらい設けたのでしょう。

「準備期間は長くて半年です。それ以上長いと、集中できなくなる。勉強方法は過去問をやるだけ。通勤時間が往復で30分あるので、ここを利用します。座れなくとも、吊革につかまり、ひたすら読む。重要なところには、マーカーでなぞりますがノートに書いたりはしません。基本は暗記。夜、同僚などから酒の誘いがあったら、断らずに行きます。サラリーマンは人間関係が基本ですから。そして、飲んだら、決して勉強してはいけない。読んでも頭に入りませんし」

「ビル管を取得するなら、“10年分の過去問を3回読め”、と社内で訴えています。また、試験では計算問題が複数出題されますが、手をつけてはいけない。時間を取られるからです。配点は変わりません。わかる問題を確実にやっていくことが重要です」

資格取得で独占できる業務を得て、また広範な知識も得て、会社の業績に貢献した藤野氏。入社3年目で執行役員兼技術開発部長に抜擢されました。

「資格取得で出世したり、高い報酬を得られるようになったのではなく、あくまでも実績によってです。実績を残すためのツールが資格です。本給よりも成果給がいまは大きいです」と藤野氏。

20年以上前のことだが、ゼネコンから不動産会社に転職を考え、まずは宅建を取得したそうです。業務独占資格の宅建をもっていたことは、不動産会社に転職する前提だったでしょう。

ということで、これで終わりです。読んでいただいてありがとうございました。

最終回の結論

  • 多くの会社は、社員の能力開発を進めようとしている。その手段として、資格取得は有効と考える会社もある。
  • 資格取得にはコツがある。期間や方法など効率的に勉強すべし。
  • 資格試験では難問や計算問題は、場合によっては捨ててしまえ。
  • 資格を取得し、スペシャリストで生きる道もある。
  • 60歳を過ぎても資格は取れる。そして、業務独占型資格を取得すれば、高齢者でも働く道は開ける。

今回、企業へのアンケートでわかった、資格の今

  • 難関資格をもてば、会社は自分を評価してくれるというのは幻想。
  • ただし、業務独占資格は転職への近道。
  • 会社は自己啓発としての資格取得奨励と、戦力としての取得奨励の二本立てで社員に資格を奨励している。失われた20年超を経て、終身雇用が崩壊へと向かうなか、前者の意味は失われつつある。
  • グローバル化が進行するなか、スペシャリストは求められてはいく。職務においても、あるいは経営においても。
  • グローバル化において、いまはTOEICによる英語力の評価はある。だが、語学はツールでしかない。通訳なら別だが、英語ができても営業や交渉など現実の仕事ができない人は評価されず、いずれリストラの対象に。英語力を過信するのは危険。
  • 職能資格制度をベースとしている日本企業が、職務給に代表されるグローバルな人事制度を、本当にこれから導入していくのか。ダイバーシティー(多様性)など、枝葉部分の改革は積極的だが、幹を改革しようとする会社はまだ少数。グローバル化から評価、人事システムが変わると、職務専門家の評価が高まり、国際的な資格が評価されたり国内資格も内容があれば評価される可能性はある。
  • 資格はあくまで、自分を磨くための目標である。取得を目的にしてはいけない。現状、日本企業は社員に資格取得を奨励していても、取得者が思うほど資格を評価してはいない。

提供:http://www.president.co.jp/

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