バスの運転手に女性!男職場の人手不足は「バスガール」が救う!


各産業で人手不足が深刻化している。路線バス業界も例外ではない。バス運転手になろうという若い男性が減っている上に、3K職場とのイメージが人手不足に拍車をかけている。

そのような状況を打破しようと、若い女性を運転手として採用しようという動きがある。バス運転手の女性採用を促進しようと活動しているのが、求人情報大手リクルートジョブズで市場調査などを手がけるジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏だ。なぜ、バス運転手への女性採用を呼びかけているのか。宇佐川氏に話を聞いた。

リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏。人手不足など労働市場の動向に詳しい。(写真:都築雅人)

リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏。人手不足など労働市場の動向に詳しい。(写真:都築雅人)

路線バスの人手不足が深刻だと聞きます。少子化で運転手になろうという若者が減っている上に、運転手の高齢化が進んでいる。この状況を打破するには、もはや女性活用しか道はないと提唱されていますね。

宇佐川:はい。路線バス業界の人手不足はかなり深刻で、シニアの運転手を嘱託で採用するなどしてかろうじて路線を維持している状況です。60歳以上の運転手の割合は16.4%(2012年時点、出所:日本バス協会)にもなり、バス会社によっては75歳という運転手もいます。従業員の平均年齢で見ても、バス業界は48.3歳で、全業種の42.8%を大きく上回っています(2013年、出所:賃金構造統計基本調査)。

運転手が高齢だからといって、必ずしも事故のリスクが高まるというわけではないようです。ひとたび事故が起きると、その会社の存続に関わりますから、各社は健康管理を徹底しているからです。バス会社によれば、事故のリスクはむしろ個人の問題に起因するところが大きいようです。

シニア運転手の大量退職で地域の足が消滅する

問題なのは、シニアの運転手にはいつ辞めてもおかしくないという、退職リスクがあることです。ヒアリングしたバス会社の1社には、65歳以上の運転手を150人も雇用しているところもありました。そのような会社は、若い運転手を採用しなければ、近い将来、路線が維持できなくなるという切実な状況に陥っています。

バスは、市民の生活の足です。特に地方ではその傾向が強い。買い物や病院、学校に行くときに、バスは欠かせない交通手段になっています。最近では、少子化で学校が統合されたことで、バスに乗らないと通学できない地域が増えており、スクールバスに対するニーズが高まっています。しかし、人手不足によって、これらのバスが運行できなくなりかねない。生活の足がなくなると、地域が孤立してしまいます。

もう女性しか労働力は余っていない

このような状況を解消するのが、なぜ、女性運転手なのでしょうか。男性ではダメなのですか。

宇佐川:もちろん、従来のように若い男性を採用できるのであれば問題ありません。しかし、そうもいかない現実があります。

男性と女性で、それぞれの潜在的な労働力の割合と実際の就業率を調べると、男性の場合はその差はほとんどありません。しかも、就業率は9割以上に達しています。つまり、男性ではほとんど余剰の労働力がないのです。

そのうえ、少子化で労働力そのものが減っています。男性の採用を増やすとすれば、潜在的労働力率と就業率がともに低下する65歳以上のシニア層しかありません。昨今、様々な業種でシニア層の活用が議論に上るのはそのためです。しかし、先ほどお話しした通り、バス業界では既にシニア層の経験者採用はかなり進んでおり、ここの余剰感もあまりありません。

一方、女性では状況が大きく異なります。潜在的労働力率も就業率も、いわゆる「M字カーブ」と呼ばれるものになります。出産・育児世代の数字が、M字の谷間のように落ち込むわけです。しかし、特徴はそれだけではありません。潜在的労働力率と就業率の差が、男性と比べて大きいのです。特に、25歳から44歳くらいまでの女性では、その差は2割ほども開いています。

つまり、女性が働きやすい環境を用意すれば、女性の就業率が上昇し、労働力としてもっと有効に活用できる可能性があります。

バス運転手の女性比率はわずか1.4%

確かにそうですね。ただ、女性が男性ほど働けないのは、様々な事情があります。

宇佐川:日本における女性の就業率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国34カ国の中で24位と低迷しています。その最大の理由の1つは、長時間労働です。男女ともに、多くの企業で長時間労働を強いられています。そのため、出産や育児を機に、多くの女性が一度仕事を辞めざるを得ません。

女性の社会進出は徐々に拡大しているといわれますが、出産を機に退職している割合は逆に増えています。1985年から89年の間は出産を機に退職する女性の割合は37.4%でしたが、2004年から2008年の間には同43.9%に上昇しています(出所:内閣府ホームページ)。女性が継続して働き続けられる環境を、結局、企業は提供できていないのです。

女性が働きにくいのは、バス業界も同じですよね。むしろ、バスの運転手は男性中心で、「男の職場」のイメージもあります。バス業界は、他の業界以上に女性が働きにくいのではないでしょうか。

宇佐川:その通りですね。2001年から2012年までの間に、日本全国で女性のバス運転手は620人から1194人へとほぼ倍増しました。しかし、それでもバス運転手に占める女性比率は1.4%に過ぎません(出所:日本バス協会)。バス運転手は、圧倒的な男の職場です。

路線バスの運転手は実は女性に適している

しかし、先ほどお話ししたように、もはや男性だけでバス運転手の人手不足を補うことには限界が来ています。女性を積極的に採用するしか、路線バスを存続させる道はないともいえます。

実際、多くのバス会社はそのような認識を持っています。実は、調べてみると、路線バスの運転手を、女性に適した職場に変えられる可能性が十分にあることが分かりました。特に、地域の足となっている短距離の路線バスは、女性向きの職場とも言えるほどです。

どういうことでしょうか。

宇佐川:まず、路線バスは決められた運行スケジュールに従って走りますので、不測の事態によって残業しなければならないようなことがほとんどありません。あらかじめ時間が読めるために、勤務体系などの制度をうまく作れば、家事や育児との両立もしやすいはずです。

また地域密着ですので、勤務地への通勤時間も短くてすみますし、普段の生活圏で働くわけですからストレスも少ない。お客様に喜ばれるので、やりがいもある。

バス会社も、女性を採用しようと必死です。トイレをきれいにしたり、女性専用の更衣室を用意したり、休憩室にマッサージ機を導入したり、あの手この手で女性採用に向けて労働環境の改善を始めています。

キラキラ輝く女性運転手

男性が圧倒的に多い職場ですから、数少ない女性は非常に大切にされています。冬場にチェーンを巻く必要があれば男性の同僚が代わりにやってくれるなど、分かりやすく言えば、女性運転手はちやほやされる。調査では15人以上の女性運転手に直接インタビューをしたほか、アンケート調査も実施しましたが、女性運転手の多くがモチベーションは高くキラキラと輝いていました。

さらに、勤務時間のシフトを女性運転手向けに組み直せばより働きやすくなるはずです。例えば、朝7時から11時の早番シフトを作ってはどうでしょうか。子供が1人で学校に行ける年齢ならば、朝ご飯を用意して子供を残して出社すれば十分に間に合うでしょう。

もしくは、午後1時から7時の遅番シフト。学校が終わってから塾に行く子供が増えていますが、この遅番シフトなら塾から帰ってきた子供も自宅で一緒に夕食を食べることもできるはずです。

コミュニティーバスの昼間のシフトとか、運行が通学時間に限定したスクールバスも良いでしょう。バスの運転手の賃金は、地方でも時給1000円以上と決して悪くはありません。女性の採用が進むかどうかは、働きやすい環境をいかに整備できるかにかかっています。

「ドボジョ」「トラガール」に続くブームに

なるほど。女性の積極採用に向けて、バス業界の意識は大きく代わってきているのですね。

リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏。人手不足など労働市場の動向に詳しい。(写真:都築雅人)

宇佐川:そうですね。ただ、残念なのがこうした変化があまり世間に伝わっていないことです。依然として男性社会のイメージが強く、女性運転手の募集があっても、その求人が女性の目に留まることはほとんどありません。大型バスの運転免許の取得方法がよくわからないとか、仕事内容がイメージしにくいという問題もあります。

まずは、「女性バス運転手」という働き方があることを、世間にもっと認知してもらう必要があります。女性運転手専用のバスを用意したり、女性運転手が乗っているバスを女性らしいデザインでラッピングしたり、工夫していくのもいいのではないでしょうか。

最近では、土木建築業で働く女性を「ドボジョ」、女性トラック運転手を「トラガール」と呼んだりしますが、女性バス運転手に対しても、何かチャーミングなネーミングを付けてブームを起こす必要があるかもしれませんね。「バスガール」や「バスジョ」とか。何かいいネーミングがあったらぜひ、日経ビジネスの読者の皆様からも募集したいです。

男性社会の印象が特に強いバス運転手で女性の活用が成功すれば、他の職種でも女性活用ができない理由はなくなると思います。私がバス運転手で女性の積極採用を呼びかける狙いも、実はそこにあります。

提供:http://business.nikkeibp.co.jp/

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